苦味とムクミちゃん
「胃の調子がどうもモヤっとする時、飲みたくなるんです」
とってもとーっても苦い漢方薬系の胃薬のお話しです。屋久島・種子島産の生薬が主成分で、この苦味がたまらん。というムクミちゃん(仮名)。
その胃薬は私も幼い頃、たまに「オブラートに包んで鼻つまんで飲むのじゃ」と親に服用を迫られた記憶があります。本当に苦くて、臭いもすさまじくて、オブラートで何重に包んでも(残念ながらカプセルや錠剤ではなく粉末だった)ただよってくる
「THE・良薬口に苦し」なオーラ。5~6才頃の記憶と思われますが、蓋を開けるのも嫌だった。どうにもこうにも飲み込めなくて、飲んだとウソついて捨ててやろうか!と思った強烈な印象が残っています。
おお、それを愛飲している根強いファンがいるとは。
(そして昭和8年の発売以来、今でも売ってるんだ、あんなに苦 い の に !)
ああ、オトナになった今でも、果たして飲みこめるのかワタシ。正直自信がありません。
しかし、ムクミちゃんがなぜ、そのような苦いものを摂りたくなるのか?
古代中国医学では説明がつくのだなぁと、妙に納得している今日この頃です。
薬物の味覚は5つに分けられまして「五味」といいます。五味太郎さんの“ごみ”と読みます。
辛い / 甘い / 苦い / 酸っぱい / 塩辛い
それぞれ作用に特徴があります。
問題の「苦」味の作用は、
・燥湿作用:湿を乾燥するので湿証に◎ 湿を乾燥させて取り除いてくれます。
・泄降作用:上にあがっちゃった“気”や、熱邪を降ろしてくれます。排泄と降下作用。
・開胃作用:少しの苦味は胃の機能の促進、調整に◎
また、「苦」味は「心」の臓と「小腸」の腑に働きかけるので、心がお疲れ様の精神疲労、大小便の異常を和らげる効果も期待できます。
さて、苦いモノ好きのムクミちゃんは、どちらかというと「湿証」タイプ。彼女のカラダの状態は、以下のような感じでした。
●精神疲労で気持ちの浮き沈みが多い、やる気が起きない…「心」がお疲れさま状態
●重だるく疲れやすい・・・湿邪って、どよんと陰質なので、重いんです
●お腹の膨満感が起こる事も…「小腸」弱ってますね状態
無意識に、苦いものを摂る事で不調を改善しよう、としているのかも知れません。うまくできてますね、ニンゲンって。ムクミちゃんはゴーヤ(苦瓜)も大好き。むさぼるように食べちゃう!のだそうです。

ジメッと蒸しッとする暑さの毎日です。身体や頭がどんより重い、夜も寝にくかったりするし、食欲もイマイチ、という事も。
そんなときには少々苦味の有るお野菜で「開胃」=胃を開いて食欲復活。
瓜類のお野菜で、熱を冷ます。
室温、湿度を上手に調節すると、ムクミちゃんな方は過ごしやすいでしょう。
でも、東洋医学はバランスが肝要です。「少量の」苦味、がポイントです。
また、瓜類のお野菜やキャベツ、白菜、ナス等も、熱を冷ましてくれますが、温める力が弱っている「陽虚」体質の方には冷やしすぎで逆に調子が悪くなる場合もあります。
温め系・辛い系のお野菜、ネギやニラ、にんにく、シソ、ニンジン等も一緒に摂ってバランスを取るのがオススメです。
旧blog・2016/07/28 より一部改定